その西陣織の製作には実に多くの職人が携わっている。図案を書く職人、糸を染める職人、織物を織る機械、織機(しょっき)の部品を作る職人など、それぞれ独立した業者が一体となって一つの織物を作り上げる。これらの職人の手を渡り、材料や道具が最後にたどり着くのが織物を織る職人、織屋である。
京都市街の北西部、大通りから外れた住宅地のとある家からかすかにガシャンガシャン、と機を織る音が聞こえる。工房は自宅の中だ。西陣織の織屋を45年以上に続けている石田廣さんに話を伺った。
石田 廣(いしだ・ひろし)
西陣織の伝統工芸士(製織部門)。明治時代以前から続く京都・西陣の織屋に生まれる。職業訓練所で西陣織を3年間学び首席で卒業。帯を中心に45年以上織物を作り続けている。得意な技法は、帯に華やかさを与える「引箔(ひきばく:金箔を塗った和紙を細く切断したもの)」を用いた織り方。
石田 まき子(いしだ・まきこ)
石田廣さんの奥さん。石田廣さんとともに、織屋を営む。
(撮影:宮野 舞)
▶職人たちの「仕事」を一つの「形」に織る織屋
▶京の歴史と共に
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▶織元と職人たち
▶ただ機械で「織る」わけではない
▶明治から続く織屋
▶織屋の家に生まれて
▶織物づくりの難しさと醍醐味
▶プロデューサーがおらへん
▶最後の職人になるかもしれへん
▶職人になるために
▶異業種交流で西陣の新しい方向性を探して